探偵事務所と提携しているから、こっちの依頼内容は全部向うに伝わっていた。
流れとしては初期調査30万円、そこから着手金として50万円、成功報酬として100
万円、かなり高額で私にすぐに用意できるような金額じゃない。
特に初期調査は探偵事務所にもう調査を頼んだ後だったから二回払うようにで納得がいかなかったので抗議した。向こうの言い分としては探偵が行う調査とは内容が異なるので仕方がない、ということだったけど。でも、名前とか全部もう調べてる部分もあるんだからその辺はどうなるの?って抗議したらそれなら必要な部分だけ、と15万までさげてくれた。
そこから具体的な別れさせ屋のやり方の説明を受けたけど、簡単に言えばこういう感じ。
奥さんが趣味でやってるフラワーアレンジメントの教室にイケメンの若い男を入会させて、奥さんに言い寄る、で、奥さんとラブホに入るところを写真に撮って・・・あとはお好きに・・・ということだった。
その場合の弁護士なんかも紹介してくれるらしい。
私が旦那さんならそれでいいんだろうけど、私は不倫相手で旦那さんが最後は奥さんを詰めないといけないので、そのあたりはどうなるのかなってふと彼の事を思った。彼は奥さんの浮気を許すかな。
別れさせ屋に依頼したけど
初期調査の15万円と着手金の50万円は別れさせ屋が提携してるローン会社を使用して何とか用意することができた。
高いけどこれで彼と結婚できるなら・・・高くないはず。あの時の私はどうかしてたかもしれない。
別れさせ屋への支払いが終わってから別れさせ屋の工作が始まった・・・らしい。らしい、というのは自分の目で見ることができないから、別れさせ屋が毎週送ってくる調査報告書を読んで想像するしかなかったからだ。
調査報告書は単純なものっていっていいものだった。
10ページくらいでまとまってた時もあればぺら用紙一枚、今週は特に動きがありませんでした、っていうのもあった。最初の工作期間の三ヶ月が過ぎて、別れさせ屋から追加の着手金の請求がきた。なんで?!聞いてなかったけど、着手金の50万円は三か月の工作にかぎったものだった。
最初の説明では三ヶ月で大体効果がでる、と言われていたからその後のことはその後決めるものだと思っていたけど、こうもあっさり追加の50万円を請求されるなんて。50万円なんてない!そういったら、それでは今回の依頼はこれで終わりにしますかって。馬鹿にした態度だと思ったけど、50万円をどぶにすてるようなことになる。
しぶしぶ追加の依頼として50万円と今回の三ヶ月でなんらかの結果を必ず出すように!そう言って電話を切った。
なにせ、イケメンが奥さんに言い寄るっていう作戦だったけど、大事なイケメン担当者の事もいらないし、今二人がどんな感じなのかもさっぱりわからない。送られてくる報告書には二人は親密に会話をする関係になった、とか、会話の内容が・・・とかそんなことばかりだ。会話をするだけなら誰とだってするだろう。肝心なのはラブホテルまで二人で行くような間からになるかどうかじゃん。
別れさせ屋の気になるうわさ
探偵に30万円、別れさせ屋に120万円ほど費やして、経済的にも精神的にも追い込まれていた時に、気になる噂をネットで見た。別れさせ屋詐欺というやつだった。別れさせ屋とか復縁屋とか、探偵の中にはお金だけとって適当な報告書を送って、追加の着手金をどんどんとせしめる手口があるとかって。まさかなって・・・自分が詐欺に落ちてるってなかなか人間は考えたくないもの。
だまされたっていうプライドが邪魔して認めたくないのかもしれない。私の依頼した別れさせ屋はちゃんとした業者だと信じた。東京都の認定の番号なんかもあったし。120万円もはらってるんだからだまされちゃった!じゃぁすまないよ!
別れさせ屋 詐欺 で検索したらいっぱい出てくる詐欺業者のリスト。そのリストの中に私が依頼した業者もあった。ご丁寧に詐欺業者が送ってくる調査報告書のテンプレなんていうのもあって、私が毎週受け取っていた調査報告書と全く同じフォーマットだった。
私はいてもたってもいられなくなって、奥さんと工作員のイケメンがいるはずのフラワーアレンジメント教室まで確かめに行った。
土曜日の午後、渋谷の某商業ビル、ガラス張りの教室の中にはあの奥さんが。教室は女性しかいなかった。イケメンはおろか、男性は一人としていなかった。
私はすぐに別れさせ屋に電話をして説明を求めたけど、向こうの担当者はのらりくらり。よくもまぁ、そこまでぺらぺらと都合のいい嘘を並べられるなっていうくらい適当なことを言って私の疑問に答えようとしなかった。私は訴えますよ!と最後は言ったけど、向こうは訴えたかったら訴えたらいいんじゃないですか、だって。
詐欺だってこの時に確信した。イケメン工作員なんていなくって奥さんは私が100万円ついやした半年の間もフラワーアレンジメントを楽しんでいただけだった。